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Manettia編集部

《インタビュー》中国語を学びたい人必見!キクタンの著者である目白大学 中国語学科 氷野先生へインタビュー(後編)

「キクタン」の著者であり、目白大学 外国語学部中国語学科 学科長の氷野先生のインタビュー(後編)は、台湾留学、中国語の学習方法についてお話をうかがいました。


(写真:氷野先生提供)



氷野先生と中国語の出会いを教えてください。


氷野:大阪の公立高校に在学していた当時、修学旅行で中国(上海、蘇州、南京)に行くことが決まっていました。その修学旅行で現地の高校生との交流があると知り、また当時「これからは中国が熱い!」というような空気感があったため、高校で開講されていた複数の第2外国語の授業の中から「中国語」の授業を選択したのが中国語との出会いでした。




◆中国語に関する情報はどのように得られたのですか?


氷野:当時の日本では、現在ように街中で中国人を見かけることはあまりなく、中国語の音楽やコンテンツに触れる機会も少なかったです。そのため、テレビやラジオの中国語講座を聴いたりして勉強していました。ほかには、FM COCOLOという外国語放送をしていたFMラジオの番組で中国語の歌を聴くのが楽しかったと記憶していますが、曲のタイトルは覚えていません…。初めて認知した最初の中国の曲は、大学1年の夏に中国旅行に行ったときに食堂のラジオで流れていた曲で、食堂の人にこの曲のタイトル教えて!と聞いてカセットテープを探して買った記憶があります。

 

梁咏琪《胆小鬼》1998.6

 

◆初めて出会った中国人は?


氷野:高校の中国語の授業を担当してくれた上海出身の大学院生で、たしか李(中国では李という名字を持つ人が1億人くらいいるそうです)というお名前の先生でした。『青年漢語』という当時出版されたばかりの高校生向けの中国語の教科書を使って授業をされ、その教科書はまだ今でも大切に保管しています。


(写真:当時の使用した教科書と書き込み/氷野先生提供



◆中国語の魅力とは?


氷野:いろいろありすぎて、語りつくせませんが…(笑)。何か一つ上げるなら、自分の世界をもう一つ作れるということでしょうか?日本語だけの世界にはないものを覗けたり、日本語だけしか知らないと分からない価値観に触れることができるのが最大の魅力だと思っています。

 

◆氷野先生の好きな、素敵な中国語のフレーズは?


氷野:素敵かどうか分かりませんが、字面が好きなフレーズとして”说曹操曹操就到shuō Cáo Cāo Cáo Cāo jiù dàoという言葉があります。(三国志の)曹操の話をするとちょうど都合よく曹操がやってきたという故事からきたもので、「うわさをすると丁度その当人がやってくる」という意味になります。このフレーズを中国人に発音してもらってみてくださいリアルに聞くときっと萌えますよ。


◆台湾の恋人ならではのイベント(記念日)はありますか?


氷野:2月14日のバレンタインの他に、七夕情人節(七夕)という旧暦の7月7日に祝う行事があります。旧暦なので毎年日付は異なりますが、だいたい8月頃。西洋文化のバレンタインと中国の織姫彦星伝説が合わさり、恋人たちの日になりました。日本のバレンタインデーとの大きな違いは、日本は女性が男性にチョコレートを送りますが、台湾では男性が女性にプレゼントをすることが一般的で、アクセサリーや花を送ったりします。 縁結びの神様として知られる月下老人が祀られている台北霞海城隍廟(台北市大同區迪化街一段61號)はこの期間、参拝客であふれかえります。日本のバレンタインデーと違い、バレンタインデーに神社やお寺と考えると不思議な気がします。台湾ではバレンタインデーよりこの七夕情人節のほうが断然盛り上がります。

 

ちなみに中国大陸では、バレンタインデーでは男性が女性にバラを送る日で、その日はバラの花束を抱えた男性を街中で見かけます。バラは本数で込める意味合いが変わり、1本なら「唯一」、中国語で「永久」に続くという意味を表す「久」と同じ発音の「九」にかけて、9本、99本、999本のバラを送る人もいます。15年ぐらい前にちょうどバレンタインの日に上海にいたのですが、そこら中にバラをもっている男性がいてその平和な光景に思わずくすっと笑ってしまいました。

 

◆氷野先生が中国語を教えている目白大学から行く台湾留学について、大学ごとの特徴を教えてください。


氷野:中原大学は桃園にあるミッション系の私立総合大学です。ミッション系らしい緑の多い雰囲気のキャンパスで、大学附近には夜市もあり、生活に便利。短期留学と長期留学、両方の受け入れを行っています、短期留学を受け入れている華語センターでは、一般的な授業の他に、マンツマーンに近いグループレッスンや文化体験(料理作りなど)もあり、実際に行った学生の評価が非常に高い大学です。特に長期休暇の時期に実施している短期研修は細かいところまでサポートが行き届いています。

・中原大学(桃園市中壢区中北路200号) https://www.cycu.edu.tw/


(写真:左・文化体験、右・週末観光/氷野先生提供)



世新大学は台北郊外にあり、ジャーナリスト系の専門学校からできた大学であることから、新聞コミュニケーション学部が非常に有名な大学です。目白大学の留学生は日本語学科に所属し、日本に関することを中国語で学びます。「動漫日語」(アニメ日本語)、「媒體日語」(メディア日本語)といったものから、中日翻訳、日中翻訳、観光日語といったものまで多岐にわたりますが、ディスカッション系の授業が多いのも特徴の一つです。

・世新大学(116 台北市木柵路一段17巷1號) https://www.shu.edu.tw/

 

東呉大学は総合私立大学の名門として台湾の企業からの評価が高く、地位を確立している大学で、日本語教育が盛んです。学外に宿舎があり、目白大学からの留学生は、夜市で有名な士林駅からバスでアクセスできる外双渓キャンパスに通うことになり、大学への通学も含め、台湾のリアルな生活を体験することができます。

・東呉大学(11102 台北市士林區臨溪路70號https://www-ch.scu.edu.tw/october/

 

◆短期留学でもしゃべれるようになりますか?


氷野:短期でも長期でも、留学するだけで中国語を話せるようになるということはありません。まずは、留学に行くまでにどれだけの学習を積み重ねるかが大事です。そして現地に行った後、どれだけ中国語を積極的に使うか、それに尽きると思います。留学先では現地の人の輪の中に入り、声を出して積極的に話しかけ、日本語環境を完全にシャットアウトすることが大事です。とにかく中国語をたくさん聞いて口に出すことで、自然と話せるようになります。「とにかく話せ―!」という感じですね。


(写真:台北の夜市のゲームコーナー/氷野先生提供)



◆簡体字と繁体字、どちらを勉強すればいいですか?


氷野:どちらか一方ではなく、ぜひ両方を覚えてください。高校までに古典や漢文を学んでいれば、日本の漢字の旧字体はすでにマスターしているはずです。そうすると、基本的な繁体字もマスターしていることになります。それに加えて簡体字を覚えると、中国大陸やシンガポールでも読み書きに困りません。簡体字は簡略化のルールがある程度パターン化されているので、系統立てて覚えれば楽に習得できます。

 

◆「キクタン」著書の氷野先生!「キクタン」を使った学習法についてアドバイスを!


氷野:『キクタン』は「聞いて覚える中国語単語帳」というタイトルが示す通り、聞いて覚えることに重点を置いています。中国語は漢字を使っているため、多くの日本人にとっては中国語の単語を見るとなんとなく意味が分かることが多いです。そのため、文字ではなく音と意味を結びつけることをお勧めしています。

単語帳を作っている私が言うと少し不思議に思うかもしれませんが、単語を単語帳だけで覚えるのは苦痛でしかありません。単語帳はきっかけの一つで、出てきた単語の周辺にある関連する単語もまとめて覚えてみてください。たとえば“玩”wán「遊ぶ」という単語が出てきたら、何をして遊ぶのか、その遊ぶ対象、遊びと逆の仕事に関する単語、ゲームで遊ぶならゲーム機を操作する指の動きなどなど、芋づる式に関連する単語を覚えていくのがポイントです。また、その単語が実際に会話や文章の中でどのように使われているのかを学ぶことも大切です。単語単体ではなく、文やフレーズの中での使い方を覚えることで使い方までマスターできるというわけです。


そして、言葉を覚えることは筋トレと同じです。1日サボれば3日分戻ります。とにかく毎日コツコツ続ける地味な作業が大事です。聞いて書き、書いたものを見て読み、読んだものを日本語に訳し、それをさらに中国語に訳す、といった形で繰り返します。「筋肉は裏切らない!」じゃないですが、「聞いた量、話した量はあなたを裏切りません」、ただし聞き流すだけでは全く身につかないので、意味を確認しつつ口でつぶやき、メモするという作業が、単語や表現を定着させるために必須となります。

『キクタン中国語』の入門編と初級編の2冊に収録されている単語(約1200語)と例文をしっかり覚えれば、中国語の基本的な単語と文法を網羅できます。例文も含めてすべて覚えるつもりで取り組んでみてください。



 

◆最後に、これから中国語を勉強してみたいと思っている人へメッセージを!


氷野:中国語は中国大陸だけでなく、台湾やシンガポール、世界中の中国語コミュニティー(日本だと今話題の「ガチ中華」のお店でも)でも通用します。直接話せる相手は一気に何十億となり、ネット上でアクセスできる情報も何倍にも何十倍にも増えます。

中国語は発音が難しいと言われていますが、中国語で漢詩や歌を一度聞いてみてください。こんなに美しい発音が自分にもできるようになるんだと思うと、テンションが爆上がり間違いなしです。

 

(photo&edit:Kiyori matsumoto)

 


 

<氷野善寛(ひの よしひろ)先生プロフィール>

目白大学外国語学科中国語学科准教授、N/S高等学校通学コース(中国語)コンサルタント、N予備校講師、関西大学KU-ORCAS研究員/ 専門分野:中国語教育、中国語教育史、ICTやAIを活用した中国語教育 / 主な著書『改訂版キクタン中国語』(アルク)、『官話指南の書誌的研究』(好文出版) / 大阪出身、関西大学卒、復旦大学に留学。

 

*目白大学 中国語学科公式Web

*中国語を勉強するとできることを書き出したリスト「じぶんと中国語でできること、」

 

 

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